数々の実験から来る状況証拠がクォークの存在を指し示してる、 にも拘らず本体のクォークを取り出して見せることは決して出来ない。
この忌々しい状況を説明するために人々が発明した言葉、 それが「クォーク閉じ込め」(quark confinement)である。
「そうだ!クォークは閉じ込められていて外に出られないんだ!」
当初は眉唾物だったこの概念も、 非可換ゲージ理論の漸近自由性が発見されるに至って、 人々に確信されるまでになったのである。
D1の諸君も、夏過ぎにはクォーク閉じ込めを確信していることであろう。 (参考文献)
そうそう、肝心なことを言い忘れていた。 クォーク閉じ込めは、人々の確信にも関わらず、 実は完全な形では証明されいないのである。
クォーク閉じ込めの証明の試みには幾通りかの流派がある。 実際の実験では、ハドロンの衝突でクォーク同士の距離をを無理に離そうとすると、 離れたクォークの間にクォークが対生成され、 新たなハドロン粒子を産み出すことになる。 そして生クォークが表に現れることはない。 これがハドロンジェットと呼ばれる現象である。 格子QCDではQCDラグランジアンを出発点として、 この現象をコンピューター上で再現しようという立場に立っている。