第5回 電磁波の視覚化 (2/2)


さて、物理の内容に入りましょう。 これまでの授業では電気双極子を中心にやってきましたが、今回も電気双極子に 絡んだ問題を取り上げます。今回は時間的に振動する電気双極子を考えます。

設定としては次の通りです。二点(d/2,0,0), (-d/2,0,0)にそれぞれ電荷 q0 sin (ωt)と-q0 sin (ωt)が存在するとします。ただし、ここでtは時間です。 つまり電荷が時間によって変化する場合を考えていることになります。

a) 電位

この場合のスカラーポテンシャルは、次の式で与えられます。(時間が余った人は導出(PDF)を勉強しておきましょう。)

となります。ただし、cは光速、r1,r2は点(x,y,z)からそれぞれの電荷のおかれている点までの距離を表します。再び簡単のためCGS単位系を取り、さらにq0も1に 取ることにしましょう。するとこの関数はMathematica上で以下のように定義すればよいですね。

b) 視覚化

電位はx,y,zの三次元空間で定義されていますが、例のごとく、このままでは視覚化ができません。そこで、z=0の平面に限って話を進めたいと思います。電位をz=0に制限するついでに、いくつか現れたパラメータも視覚化のために具体的な数を入れておくことにしましょう。

x, y, t に具体的な値を入れて、関数が正しく定義されているかどうか確かめておきましょう。ここで、c=5と置いたことに注意しましょう。実際の光速は秒速30万キロメートル程度ですが、そんな大きな数を入れると大抵計算機に無理をさせることになります。c=5とおいても数学的構造は同じなので、電磁波が伝わる様子は大体理解できます。(余談ですが、素粒子理論の世界ではc=1となる単位系を取ります。)

さて、視覚化に入ります。前のページで使ったManipulateやAnimateを使えばよいですね。

どうでしょうか。電磁波が伝わる様子がなんとなく理解できたでしょうか。 時間がある人はx-z平面での様子も見てみましょう。

c) Animationにおける注意点

上で紹介したプロットは、実は計算している関数の分母が0になる点を含んでいるため、 計算機が答えを返してくれない危険性をはらんでいます。Mathematicaでもバージョンによってはエラーとなる場合があります。このような場合はどうしても手で危険性の少ない形に変形してから計算をさせてやる必要があります。例えば、双極子の距離dが非常に小さい場合を考えます。この場合はdに関してテーラー展開ができて

ここでSeries[f[x],{x,0,p}]は、関数f[x]をx=0の周りで展開し、xのp次まで表示せよというテーラー展開のコマンドです。このようにして主要項だけ取り出してから、プロットする関数を定義することで、分母の極を減らすことができます。 このように近似した関数も視覚化して、同様の波が見られるか確認しておきましょう。


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