第4回 電場の視覚化 (2/2)


2.誘電体の電位・電場

真空中の一様電場 E0 の中に半径 a、比誘電率 κ の誘電体球を置いたときの各部の電位、 電場、電束密度を視覚化してみましょう。

a) 電位の視覚化

球内部には一様な誘電分極 P が誘起されます。 また球外部の任意の点では、球の中心に双極子モーメント ができているとみなして計算をすすめることができます。

ここで誘起される双極子モーメントは、

球内外の電位φinoutは、 電場と垂直な yz 平面中に原点に選べば以下のように与えられます。

この解の厳密な導出はこちら pdf にありますので、時間があるときに読んで理解しておいて下さい。
[訂正:ファイル中の(4)式と(5)式の間に ある、境界条件2)中で電位 φin, φout のθ微分が抜け落ちています。]

さてMathematicaでこの解を視覚化してみましょう。 ためしにκ=15で、aとE0 は1にして描いてみます。

カーテシアン座標に変換してやれば、通常の3次元プロットが可能です RevolutionPlot3D を用いると円柱座標のままでもプロット できます。時間のある人は やってみましょう)

ここで /; は Condition の意味で、条件が満たされたときだけ適用される という定義になっています。


b)電場の視覚化

電場は、前半でやったように、電位の gradient を計算することより求まります。

Mathematica の古いバージョンでは、1/0 が出てきてうまく扱えないところ がある、というエラーメッセージがでます。 原因は、Vの定義式のなかのcos1が原点で数値上ゼロ割り を起こしていることによります。 確かに数学的にはcos1の定義式ではx/r[x,y] となっていますから、分母も分子も原点ではゼロになり、 cos1の値は定数になります。 しかし計算機にとっては、このような表記では、単に0/0を計算 せよといわれたことになって、できないと文句を言うわけです。

Mathematica の新しいバージョンは賢くなったので、今の場合このような計算も うまく処理してくれました。しかし、より安全に計算を実行させるには 先ほどの 0 <= r[x,y] <= 1 Vの定義式で "r[x,y] cos1[x,y]"となっていたところを "x" にかえておくとよいでしょう:

このようなゼロ割りの問題は Mathematica に限らず、数値計算を行う上 で必ず取り扱わなければならない問題ですので、このような問題が存在 するということを覚えておいてください。

c)電束密度の視覚化

電束密度も同様に視覚化できます。球外での定義は電場と同じですが、 球内での定義を若干変更します。

ここで、多くの誘電体では、誘電体内部の電束密度は電場に比例しその比例係数が(CGS単位系では)比誘電率で与えられることを用いました。電束密度の大きさは、以下のようになります。



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