素粒子理論グループ

教授   岩崎 洋一、 宇川 彰、 梁 成吉

助教授  金谷 和至、 吉江 友照、 青木 慎也

講師   沢田 哲雄、 小林 庸浩

助手   伊藤 克司、 石塚 成人、 青木 保道、 野口 雅之

COE研究員  江尻 信司、長井 敬一

学振研究員 出淵 卓、谷口 裕介、G. Boyd、R. Burkhalter、H. Shanahan

大学院生 11名

【人事異動】

青木保道助手、 野口雅之助手が平成9年4月1日に着任した。 伊藤克司助手が平成10年3月31日をもって、京都大学基礎物理学研究所助教授 として転出した。 また、沢田哲雄講師が平成10年3月31日をもって定年退官された。

【研究活動】

素粒子理論グループにおいては、格子ゲージ理論の数値的研究と、超対称場の理論 および弦理論の研究を二本の柱に、本年度も活発な研究活動が行なわれた。

格子ゲージ理論では、平成8年9月に完成した超並列計算機CP-PACSを用いた格子 QCD の大型数値シミュレーションに大きな努力が払われた。平成8年度以来行なわれてきた クェンチ近似でのハドロン質量精密計算がほぼ終了し、 D. Weingerten 等による従来の最善の結果(1992年)を凌駕する結果を得た。 それによれば、5--10\%という 小ささではあるが、実験値とクェンチ近似での値には明確な差異が存在する。 この結果は、今年度格子上の場の理論国際会議において発表され、1980年に最初の ハドロンのクェンチ近似計算が行なわれて以来の格子QCDの懸案にほぼ最終的な答え を与えたものとして、注目を集めた。年度後半には、次のステップとして、 動的クォークの効果を取り入れたfull QCDの本格計算を開始した。これは、 大きな格子間隔でも連続極限に近い結果が得られるよう改善された格子作用を 用い、格子間隔1/a〜 1-2GeV にわたる系統的な大規模シミュレーションを 行なうものである。

以上の研究は、CP-PACSを有する計算物理学研究センターを中心に、学術振興会 研究員として滞在する外国研究者も参加して、国際色豊かに行なわれた。

高エネルギー物理学研究所のベクトル型並列計算機 VPP500/80を用いた格子QCDの共同研究も引続き追求された。特に、 平成7年度以来行なわれて来た、クェンチ近似でのK中間子のBパラメータの Kogut-Susskind型及びWilson型クォーク作用による決定、同じくclover型クォーク 作用によるB中間子崩壊定数の決定など、CP非保存現象の理解に重要となる ハドロン弱相互作用行列要素の研究について、最終結果をまとめた。

以上の大規模な活動と並び、格子上のカイラルフェルミオンの定式化と その応用、電弱相互作用における高温相転移、さらには量子重力の 格子模型の研究など、 格子ゲージ理論全般にわたる様々のテーマが調べられた。

超対称場の理論および弦理論の分野では、著しく進展している超弦双対性の物理を 念頭において研究を進めた。現在、この分野では11次元M理論や12次元F理論の 枠組みで、超対称ゲージ理論の非摂動的真空構造を明らかにすべく研究が展開し ている。その結果、N=2超対称理論のSeiberg-Witten解がM理論により再構成され、 また、例外型グローバル対称性をもつ非自明固定点の存在も明らかにされつつある。 このような動向を反映して、N=1超対称性を用いたN=2理論の解析の例外型ゲージ 群の場合への拡張、特異点理論に基づくSeiberg-Witten解の微視的基礎付け、 Seiberg-Witten解の位相的場の理論としての様相、M理論のbrane配位と 超対称ゲージ理論のヒッグス相の関係などについて活発に研究が進められ、格段の 進展が得られた。

以上の二分野に加え、量子力学基礎論の研究も引続き追求されている。

【1】 格子ゲージ理論

(岩崎 洋一、 宇川 彰、 金谷 和至、 青木 慎也、 吉江 友照、 青木 保道、 石塚 成人、 江尻 信司、長井 敬一、 出淵 卓、 谷口 裕介、 G. Boyd、 R. Burkhalter、 H. Shanahan)

【2】 超対称場の理論、弦理論

(梁 成吉、伊藤 克司、野口 雅之)

【3】 物理学基礎論

(小林 庸浩)

量子力学で計算される量を実験と比較するためには、量子状態間の干渉を消すために 何らかの非干渉性を導く機構が必要である。この非干渉性導出の機構を、熱平衡系に 関して詳しく調べ、かつ、一般的に超準空間上の量子力学に現れる状態の同値性から 導けることを示した。また、超準空間上の格子空間の性質に関して調べた。

〈論文〉

〈著書・総説等〉

〈学位論文〉

〈講演〉

〈受賞〉